みなさま
こんにちは、脚本担当の戈文来です。
「夢どろぼうの住む街」をご覧いただき、誠にありがとうございます。
お楽しみいただけましたでしょうか。
さて、この作品が生まれた背景を、ほんの少しご説明しようと思います。
夢どろぼうのトウドリは、自分が連れてきた名ばかりの友達に囲まれて、
疑問を持つことなく過ごしてきました。
彼は彼なりに、満足していたのでしょう。
あのまま人生を終えたとしても、決して不幸ではなかったはず。
ところが思わぬよそ者が現れて、居心地のいい街を次々に“荒らして”いきます。
まあ、楽しいわけがありませんよね。
だけどあることがきっかけで、トウドリは自分が信じていた周囲との関係のもろさを
思い知ることになります。
そんな彼をもう一度外の世界へ連れ出してくれたのは、
他でもなく、よそからやって来た少女のカタリでした。
どうしてカタリにそんな力があったのかと言われれば、
人に「語りかける」強さを持っていたからじゃないかな、と思います。
簡単にいうと、諦めの悪さ、ずうずうしさ。
本編には盛り込まれていませんでしたが、構想段階では、
カタリがまだ顔も知らないトウドリのことを絵本に書きながら
夜の街に向かって呼びかけるシーンがありました。
街の人たちに尋ねても、誰ひとりトウドリの名前を知りません。
それでも絵本を胸に抱えて探しつづけるのです。
いつか、声が届くことを信じて。
「夢どろぼうの住む街」のテーマは、夢奇房という団体そのものの魅力に通じるところがあります。
3年前に初めて練習場所に足を踏み入れて以来、私のなかで人との関わりに対する考え方が
ぐんぐん変わっていきました。
とにかく、ゴリゴリ音がするほど感情をすり合わせるんです。
下は10代から上は30代まで、ベテランと新人の違いもなく、
国籍さえもごった交ぜのメンバー達が、意見や不満をぶつけあいながら、
「最高の舞台をつくる」という一点を目指してグオオーッと力を結集させる。
それはそれは濃密で暑苦しい人間関係なのですが、
でも、抜群に楽しいんですよね。ほんとうに。
最後にカタリが送った絵本のなかには、こんなことが書かれていました。
個人的に、一番気に入っているセリフです。
友達は、めんどくさくて、うっとうしくて、
でも、あたたかで、じーんと心にまぶしいものを残していくのでした。
友達だから、家族だから、恋人だから、
言えることもあれば、言えないこともある。
長年にわたって築きあげられてきた関係には、なかなか動かしがたいものがあると思います。
だけど、新たな出会いに胸を躍らせるとき、
そして、身近な誰かの想いに触れたとき、
自分をとりまく世界は少しずつ変わっていくのではないでしょうか。
おしまいに。
色々な方に支えられながら歩んできた夢奇房ですが、来年、いよいよ第10回公演を迎えます。
夢奇房はお客さまと一緒に作り上げていく舞台です。
これをご覧になっているみなさまが、再び私たちの輪の中にお集いいただけましたら幸いです。
メンバー一同、心よりお待ちしております。
ではまた春に。お元気で。
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