夢奇房第17回公演『それは、ひと時の雨宿り』

第17回公演カウントダウンインタビュー 第3回

――本番が明日に迫ってきました!
カウントダウン対談、3日目は今回脚本を担当した鈴木 駿一さん(愛称:しゅんちゃん)と、
演出を担当する佐野壮文さんです。鈴木さんが夢奇房公演の脚本を執筆したのはこれが3本目。
佐野さんは今回7年ぶりの演出です!

第17回公演カウントダウンインタビュー 第3回

佐野 壮文・鈴木 駿一

※写真左から


――佐野さんは、第2回公演から第10回公演まで何度も演出に携わってきましたが、
今回はお久しぶり!感触はどうですか?

佐野:……しんどいっすね!(笑)

鈴木:(笑)

佐野:でもやっぱり、夢奇房のメンバーみんなの姿勢とかが刺激になりますね。
最近の7年間は、手伝い程度に照明スタッフに入っているだけでしたが、
1月・2月のこの忙しい時期がないと、何だか物足りない身体になっちゃったなあと思う。

――夢奇房の公演がないと、冬が越せない、というような?

佐野:そうそう(笑)。

――鈴木さんはどうでしょう。やっぱり、しんどいですか?

鈴木:そうですね……うーん、やっぱり、しんどかったですね(笑)。

佐野:(笑)

――鈴木さんは、今回で夢奇房の公演脚本を書くのは3本目ですね。

鈴木:そうなんですよね、第14回・第15回に続いて3回目です。
前の2本は演出が来(らい)さんだったんですが、今回は初めて佐野さんとタッグを組んだということで。

――やはり、演出担当が変わると違うものですか。

鈴木:そうですね、あとはその年によって舞台の作り方は変わってくるのかな。
今回は、軸となるメッセージは佐野さんが持ってきたものでした。

佐野:そうだったね。

第17回公演カウントダウンインタビュー 第3回

鈴木:物語の起承転結の、“起承”までは佐野さんが考えて、そのあとは自分が、というやり方でした。

――鈴木さんが脚本に込めた思いなどはありますか。

鈴木:今回脚本を書き進めている中で思ったことなのですが、
主人公のカケルの心情が次第に変化していくところは、自分自身の実感に基づくものでした。
人って気が付くと自分ひとりでいろいろ抱え込んでるんですよね。

――そうですね。

鈴木:そうやってひとりで悩んで苦しんじゃうんですけど、自分ができなくて悩んでいることって、
他の人の手にかかるとあっさりできちゃったりすることもあります。

――人には得手不得手がありますものね。

鈴木:だから、自分にはもう手に負えない!もうできない!ってときは正直に「できない!無理!お願い!!」って 助けを求めてもいいのかなあって最近は思います。その方が愛されますし(笑)。

佐野:確かに(笑)。

鈴木:だから、ある意味で「迷惑をかける」っていうのも必要なんじゃないかなって思います。
他人に迷惑をかけるとかいう意味じゃなくって、別の意味で……

第17回公演カウントダウンインタビュー 第3回

――世話になる、というような?

鈴木:そうです、仲間に迷惑をかけちゃうこと、世話になっちゃうっていうことも、決して悪いことではないんじゃないでしょうか。

佐野:そのしゅんちゃんの思いが、上がってくる脚本にすごい込められてくるんだよね。ありありと!(笑)

鈴木:ありありと!(笑)

佐野:脚本からにじみ出てるんだよね。

鈴木:(笑)

――そういえば、鈴木さんは、今回主役のカケルですよ!

鈴木:そうそう、そうなんですよ!

佐野:(笑)

鈴木:もとは自分がやるつもりはなかったんですけど……

佐野:じわじわ追い詰めたっけ(笑)。

鈴木:(笑)

佐野:それにしても、さっき言った通り脚本にはしゅんちゃんの思いがありありとにじみ出てるから、主人公のカケル、
「カケル」って名前じゃなくて「しゅん」でいいじゃん! とか思った(笑)。

鈴木:(笑)

――そんなふうに鈴木さんが思いを込めた脚本ですが、舞台上で形になっていくのを見ていてどう感じましたか。

鈴木:率直に言うと「ああ、こんな舞台になるんだ」という驚きですね。書きながら自分はかなり完成形を頭の中で描いているんですけれど、
演出担当の佐野さんの手にわたって、それぞれ役者さんや演者さんが演じると、こんなにも変わるものなのだなあって。

――思っていたのと違う、という感覚ですか。

鈴木:いい意味で、そうですね。みんながやっているのをみていて、まるで自分ではなく
別の人が書いた物語のような……そんな不思議な気持ちになったりしました。

――おもしろいですね。

鈴木:なんというか、例えるなら、漬物のような。

――漬物!(笑)

鈴木:自分が味付けして漬けておいたはずものが、しばらく置いて出してみたらこんな味に!!というような感じです。

佐野:いろんな人がかき混ぜてね(笑)。

――糠漬けですね(笑)。

佐野:いろんな菌が発酵して(笑)。

鈴木:こ……こんな豊かな味わいに! これが、あのきゅうりか!!(笑)

佐野:(笑)

鈴木:舞台に立つメンバー、それぞれが持つ個性だとか雰囲気が舞台を創り上げてくれますし、
スタッフ皆さんの的確な仕事ぶりが良い味に仕上げてくれます。

――佐野さんは今回の演出、「しんどかった」ということですが、他に感想などは……

佐野:あるある(笑)。

――お聞かせ願います(笑)。

佐野:そうだなあ……まあ、演出という立場上、メンバーが作ってきたものにずかずか入り込んで、いろいろ言うことは多いから、
みんなにはストレスを与えていたとは思うけど (苦笑)。

鈴木:(笑)

佐野:それでもみんな、自分の中で消化したり工夫したりして、別のものや進化させたものを持ってくる。それはとても良かったね。

第17回公演カウントダウンインタビュー 第3回

――演出としては、久しぶりの楽しさでしたか。

佐野:いや、前やっていたのとはまた違うよ。前はどちらかというと、「こうやって」って一方的に指示することが多かったんだけど、
今は「こうしたいんだけど」とか「こう考えているんだけど」ということが増えたかな。
それは自分が変わったのか、それとも夢奇房のやり方が変わってきたのか…両方かもしれないけれど。

鈴木:皆さん、それぞれが考えてくれましたね。

佐野:うん。ここの心情表現は役者さんにゆだねた方が良さそうだなっていうときもあったし、ここの解釈は演者さんに任せようっていうケースもあった。
だから以前自分がやっていたのはプロデューサーという色味が濃かったけど、今回は純粋に「演出を楽しめている」っていう感じだったね。おもしろかったよ。

――佐野さんは今回、演出をやろうと思ったきっかけがあったそうですが。

佐野:そうですね……今回のテーマである「仲間」と関係があるんですが、これまで自分が所属してきた、大学時代の奇術愛好会だとか、ジャグリングサークルのマラバリスタだとか、
それからこの夢奇房には、つらい時や苦しい時に背中を押してくれる仲間がいるんですよね。彼らと一緒に持ち合わせた想いだったり、乗り越えた強さとかも。
人生で立ち止まったり、どうしたらいいんだろうって悩んだりした時、そういうものを思い出して、みんなの顔を思い浮かべて、前に進めるときがある

――佐野さん自身にとって、前に踏み出す力になるものなのですね。

佐野:今、何か困難に立ち向かっている仲間がいるとしたら、それをどうやって伝えようかと考えたところ、やはり夢奇房で伝えたい、と思ったんですよね。

――では、最後になりますが、お客さんに向けてメッセージをお願いします。

鈴木:今回のストーリーはいい意味でパーフェクトな人はいないというところが特徴です。
これは自分が意図したものなんですが、なんというか、それぞれ得意じゃないことがあるんですよね、うーん、欠点というのもなんか違うかな……
なんか話がまとまらないな (苦笑)。

佐野:“最後”って言われるとね(笑)

鈴木:ですね(笑)。とにかくこの物語では、仲間のチームプレーを意識しています。
これは夢奇房そのものの姿だと思っていますし、3回目の脚本執筆ですが、一貫している自分の裏テーマでもあるんです。
結束した時の力はすごいぞ、高い壁も乗り越えることができるんだっていう。
今回はまたその味付けが違うけど、前と同じく見に来て下さるお客さんには、意外と忘れがちな身近な仲間を思い出してみて、
「そういえばこの人に救われたな」、「あいつにありがとうって言おうかな」、「久しぶりに連絡取ろうかな」って思ってもらえたら嬉しいです。

――ありがとうございます!では、佐野さんお願いします。

佐野:今回のメッセージを、明確に届けいたい人が何人かいたのですが、こうして公演を創っていく中で最終的には、
みんなに届けたいものになったなって。その実感がとても楽しくて興味深かったです。

――久々に演出やった甲斐がありましたね!

佐野:あと、自分が一貫して持っているテーマは、「舞台は一瞬のできごと」だということ。
集まった仲間、その日のその会場の空気、会場に来てくれたお客さん、すべてを含めて全員が仲間、
この空間に集まったというこの“奇跡”を感じながら観てもらえたらいいなって思います。

鈴木:そうですね。

佐野:しゅんちゃんが言った通り、この物語にはパーフェクトな人はいないし、ファンタジーでも奇跡が起こる物語でもない。童話とかでもない。
いわゆるごく普通の日常のシーンを切り取ったようなもの、なんですよね。
これまで夢奇房の舞台を観て下さった方にとってはいつもと違った夢奇房が楽しめるのではないでしょうか。
それに、初めて観て下さる方にとっては分かりやすいものになったと思います。ぜひお越しください!!


――ありがとうございました!いよいよ明日は夢奇房第17回公演「それは、ひと時の雨宿り」当日です。
脚本の鈴木さんと演出の佐野さんが込めた想いを、夢奇房全員がチーム一丸となって皆さんにお届けします。ご来場お待ちしております。

【プロフィール】

鈴木 駿一(すずき しゅんいち)

東北大学学友会奇術部出身。愛称「しゅんちゃん」。
夢奇房には第12回公演から参加。子どもも大人もわくわくしてもらえる「オカシな」作品をつくり続けるのが目標。

好きなものは、お笑いと工作・DIY。中でも好きな芸人は、ラーメンズ、バナナマン、サンドウィッチマン。

【主な出演作】
2015年 第12回公演「虹の独唱歌(アリア)」 ジャロ(アラカルト)
2016年 第13回公演「空飛ぶクジラと見えない空と」 ピクト(主人公)
2018年 第15回公演「重ねテイク、アクション!」アルフ(主人公の後見人役)
2019年 第16回公演「ファインダー・アウトレイン」オリバー(駅員役)

佐野 壮文(さの たけふみ)

法政大学奇術愛好会出身(元幹事長)、マラバリスタ出身。夢奇房立ち上げメンバーの一人。
第2回公演から、プロデューサーとして全体の構成・演出を担当し、さまざまなテーマで各公演を創り上げてきた。
今回、第10回公演以来7年ぶりの演出担当となる。 また、クラウンそーとしても過去の公演で出演している。

普段は広告代理店の営業として多忙な日々を送る。趣味はサッカー観戦とスノーボード。

【主な出演作】
2004年 第1回公演「然」 (ジャグリング)
2009年 第6回公演「ゆめ戯草子〜ふたりの浦島おかし話〜」 そー(クラウン)
2012年 第9回公演「夢どろぼうの住む街」 そー(クラウン)